過酷・期間工2日目のブログ【2】―インパクトドライバーは必殺技の名前ではないらしい―

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インパクトドライバー

ポンキッキーズの鈴木蘭々ぽいセリフで教官登場

「うぉーい、全員集まってるかあ??」

どこからともなくポンキッキーズの鈴木蘭々のようなセリフが野太い声で発せられ、どこからともなくのっしのっしと40台くらいの小太りのおっさんが現れた。

一目で今日の教官になる人だとわかった。
見た目、声、歩き方。なにをとっても貫禄と職人感が凄まじい。
間違いなく相当な手練れのベテランだ。

映画でベテランのメカニックの役をやらせるならこいつしかいない、というような、お手本のようなベテラン社員っぷりだった。
油で汚れたツナギと後ろポケットに無造作にいれたレンチが実にいい味を出している。


教官がみんなの前に立ち、「今日みなさんに教える小畑といいます。よろしくお願いします」とぶっきらぼうに言った。

おれの隣に立つ真面目そうなおっさんが「よろしくお願いします!!」と力強く言ってお辞儀をした。
そのやる気がおれも欲しい。おれはこういう時、ハキハキと挨拶ができない。「よよひくおねがひまふ」といきなり入れ歯のお婆ちゃんに変身してしまう。

「じゃあちょっとそこの作業台のとこに集まって」
教官は離れた台を指さしてそう言うと、さっさとてくてく歩いていった。
教官の手練れオーラがすごいだけに、その後からのそのそついていくおれたちの烏合の衆感が際立つ。


「んじゃ、とりあえずここにあるものを一通り説明します。全部覚える必要はないんで、あーこういうとき使うんだな程度に聞いていてください」

教官が若干めんどくさそうな目とフランクな口調で、作業台に並べられた様々な工具を、一台づつ手にとって説明していく。

口で説明したって使わなきゃ覚えらんねえよ、ま、とりあえず義務は果たしますよといった、ちょっと投げやりな説明の仕方が、無精髭のはえた武骨な職人顔に似合っていた。

そんなことを考えていたため、ひとつも知識が入ってこなかった。

「俺ありますヨ」

「じゃ、とりあえず今後一番使う頻度が高いであろうインパクトドライバーの習熟を始めます。ちなみに今までインパクト使ったことある人っている?」
――みんな授業参観の生徒のごとく下を向く。

そりゃそうだ、おれにいたっては先ほどの説明をスルーしたせいで、インパクトドライバーがどんな姿をした道具かもよくわかっていない。

なんかベジータの必殺技っぽいなとぼんやり考えていると、おれの近くに立っていた長身で金髪をした男がヒョイっと手を挙げた。

「俺ありますヨ」

男はそう言って、自信たっぷりの目で不適ににやりと笑った。
俺はお前らと違う。男の目はそう言っているように思えた。
大体カタカナのヨを使う奴は、世の中をなめた不良と決まっているのだ。
おかしなことにこんな場所でさえ、男が集まると競争が始まる。
先ほど元気な声で挨拶をしたおっさんが「ぐぬぬぬ」みたいな悔し気な顔で男を凝視する。

お気づきの通り、ここまでの描写はおれの主観的観測がふんだんに盛り込まれている。

パツオ

「お、じゃあ君やってみようか」
教官が工具をひとつ手にとりエアホースをつないだ。

“ああ、これがインパクトドライバーか”
周囲の人間と比べ、おれは完全にワンテンポ遅れをとっていた。