過酷・期間工2日目のブログ【3】―スキルなき英雄。パツオの度胸はどこからくるの?―

▼シェアシタ貴方ヘ福ガ訪レマスヨウニ▼

パツオ

ひとまずパツオと命名しよう。

「(インパクトドライバーを使ったこと)俺ありますヨ」
自信たっぷりの目でにやりと笑う金髪男。
相当な使い手の気配に、おれたちギャラリーは息をのんだ。
マンガっぽい展開にワクワクだ。

「お、じゃあ君やってみようか」
1ミリも表情を変えることなく、小畑教官は男を手招きした。
今まで同様のシーンを1000回は見てきたであろうことが、その仕草からわかった。
教官がインパクトドライバーにエアホースを差すと、三ツ矢サイダーを開けたときのようなブシュっと爽快感のある空気の音が漏れた。

おれの横から「なんか屁っぽい音したな」と小声で聞こえてきて、物事の感じ方って人それぞれなんだなあと、なぜかおれは人間の深さに感じ入った。

おれがすごく浅いところで人間の深さに感じ入ってる間、金髪男(この日しか会ってないので名前がわからない。仮名・パツオにする)はさくさく前に出て教官からインパクトを受け取った。

さらに教官は、ボルトを5本くらい無造作につかむと、それをパツオに手渡した。

パツオがインパクトを使って与えたものは、文字通りインパクト

作業台の横には、無数に穴の空いたボルト打ち込み練習用の金属版が立てられていた。
教官はそれを指差し「じゃあちょっと今持ってるぶんだけ打ってみて」と、相変わらず面倒そうな顔で指示をだした。
パツオが中腰になる。

「じゃスタート」
教官の声にパツオがインパクトのトリガーを引き、1本目のボルトを打ち込んだ。
ガキューンと耳に障る金属音。

そして2本目。
その時、ギャラリーに衝撃が走った。
ーーボルト落とした!
指からこぼれ落ちたボルトを素早く拾うパツオ。
しかし、慌てているのか今度はボルトをインパクトの先にセットできない。
首をひねるパツオ。
その時、ギャラリーに衝撃が走った。
ーーまた落とした!
再びボルトを拾うパツオ。
しかし、慌てているのか1本を拾ったと同時に、また別の1本が指からころげ落ちた。
それを拾おうとするパツオを見て、おむすびころころという昔話を数十年ぶりに思い出した。

悪夢的なループ映像は「はいストップ、そこまで」という教官の冷めた声で終了した。
首をひねりながらギャラリー席へ戻るパツオを“なんだったんだ、この茶番”という、声なき声が出迎える。

「これ1本目も山あげてるな。みんな見て、この穴にボルトが斜めに刺さった状態を”山あげ”って言うからね。これダメだから」
教官がパツオのねじ込んだボルトを指差しながら、非情なる追い討ちをかけた。
今まで1000回は同じシーンを見てきたであろう、なんの感情もない声だった。

だがその裏でおれは秘かにパツオに感心してもいた。
あのスキルで堂々と前に出る度胸は、スキルがあって出るより全然すごいな、と――。

そして余談だが、偽物のカツオのような「パツオ」という名前の違和感が、今更ながら気になりだして文章を書くことに集中できない今なのでR。