はじめての期間工【2】―嵐を呼ぶ期間工 クレヨン森ちゃん―

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禁じられた遊び
―”か”を消すだけであら不思議―

あー、やだやだ書きたくない。
きかんたま(期間工の卵のこと 前ページ参照)の時期のことだ。

フィジカル、メンタル共にぼろ雑巾のようになった、あの時期のことだ。
筆が重いったらありゃしない。

思い出したくなくて、先程から「か」を消したり戻したりして遊んでいる。

具体的に言うと、こういうことだ。
「きかんたま」→「きんたま」
「きかんたま」→「き○んたま」
「きかんたま」→「きんたま」

廃人だ。
ヒマを持て余した廃人の遊びだ。

ああ、書くか。


パニック パニック パニック みんなが あわててる!

とうとうきた、初ライン作業、初フリード。

荒ぶる心そのままにインパクトドライバーをブルルンと空回りさせて、おもむろにフリードのドアの前に立ち、おれは低く腰を落とした。

ブザーがなる。
ラインが動き出す。
――最初はなんだっけ?
頭は真っ白だ。
いくしかない。

ボルトを穴に差し込む。勢いよくトリガーを引く。

ギャキューン!
くっ!
いきなり山を上げてしまった。

「それ直すんで次のボルトいってください」と加藤さんの声。

隣の穴にボルトを差し込む。この時点で嫌な予感しかしない。
ギャキューン。
やっぱりか!

「そこも直すんで次の作業」
えーとえーとプラグか。

じゃない、もう2ヵ所締め付けがある。
ギャッギャギャッ。
これはうまくいった。

で、プラグの連結だ。
これは手でやるから簡単だ。

と思いきや、慌てたせいかプラスチックの爪がうまく噛み合わない。
強引にそれっぽく押し込んだが、手応えがない。
うあー、もういいや、これで!

で、なんだっけ。あ、レンチだ。
あ、レンチ持ち忘れた。

「次の作業いってください」
えーと、まずモールをとって――
「ガーニッシュからです!」

は、しまったしまったガーニッシュガーニッシュ!
はい、これをここにいれてバンって叩くんだよな。
バキッ!

折れた!爪折れた!
「ちょ、強引にやらないで!!」
さすがに加藤さんも焦りの声だ。

で、モールモール。
「森三さんちょっとどいてください!丘さん、次のドアやっつけて!」

おれはライン脇にはじかれた。
加藤さんがヘルプ要請のボタンを押し、VR(リーダーの次の次に偉い人)の社員が助太刀に現れた。

加藤さんとVRは、おれが山をあげた穴の修復、強引に連結させたプラグの再連結、新しいガーニッシュのつけ変えなど、テキパキと二度手間作業をこなしていく。

「加藤、お前ちゃんとフォローはいれよ! もうこっちは俺がやるから次のドアはいれ!」
VRの怒声が飛び、現場が凍りつく。

青ざめた加藤さんがスタタタンといくつかやっつけたところで、ラインが止まり休憩となった。


「おい加藤、おめえがテンパってどうすんだよ!大体なんで最初っから期間に全部やらせんだよ。まずはボルトだけ覚えてもらうとか考えながら指導しろよ!」
VRが頭ごなしに加藤さんを叱責する。

帰りてえ、と切望するに値する、実に最悪な空気だった。

男が去った後、おれは加藤さんに頭を下げた。
「――すいませんでした」
「いやいいんですけど――ただあのプラグは最悪です。ちゃんとはまってないなって、手の感覚でわかるじゃないですか。不具合はチームの連帯責任なんですよ。責任感なさすぎますよ。ガーニッシュもそう。強引にいくから爪折れたじゃないですか。あんなの初めて見ました。フォローはするんで今後はちょっとでもやばいと思ったら言ってください」

明らかに苛立った口調だった。

おバカな1日 元気だそー(もりぞー)

おれはいったんラインからはずれ、外にある習熟用のドアで、ガラス締めつけから徹底的に覚えることとなった。
フリードの作業レベルで、これをやるのは異常だ。
異常なポンコツってことだ。

あーあ、へこむ。帰りてえ。笑えねえ。
まさか1台目でこれほど失敗するとは思わなかった。
まさか1台目でパニックを起こすとは思わなかった。
まさか1台目で叱られるとは思わなかった。

その日の作業終了後、喫煙所で地味にずっしりへこんでるおれの隣に、丘さんがヒョコヒョコやってきた。
「まあまあ森三君、ドンマイドンマイ! 俺もなかなかうまくいかなくて、色々と悩んでいるよ」

言葉ではそう言うものの、丘さんの目は「ポンコツ仲間、見ーっけ!」というセリフを雄弁に語っていた。


おおお、やっぱ書いてるだけで、きつくなりますね。

さーてハッピーターン食おう。
ハッピーパウダー摂取しよう。

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