はじめての期間工【4】―ヘルプ加藤!カモン加藤!体が覚えたらこっちのもんじゃい―

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YOU、ボルト締めちゃいなよ。
体で覚えるってこういうことか。

フリードの習熟を始めて一週間。

おれは人間の学習能力の高さを思い知っていた。

「頭じゃなくて体で覚えろ」
この言葉は、体育会系男子に伝わる民間療法的な信憑性ゼロの都市伝説だと思いこんでいた。
はいはいうなづきながらも、脳内では長澤まさみのことを考えたりして、思いっきり聞き流していた。
まーったく信じていなかった。

間違っていた。
覚えるんだ、体が。
頭は覚えてないんだ、びっくりするくらい。

はっきり言って、作業中の頭の中は、常に雑念だらけだ。
その瞬間だけで消えてゆく、くだらなくも儚い想いたち。

『TOKIOもしくはNEWSの穴を埋めるのはおれじゃないか?
YOUきちゃいなよ、がようやくきちゃうときなんじゃないか?
幸いにもアルコールが飲める体質じゃない。
むろん関ジャニでも大歓迎だ。
関東から出たことないけどな!』

ベルトコンベアの上にいながら、気分は武道館か東京ドームだ。
――にもかかわらず、とにかく手が無意識に正しい動きをとるのだ。
ボルト締め完了。で、なにやるんだっけ??
――と思っている間にに必要なモールが手にある。

自転車に乗れたとき以来だよ、こんな万能感。
カモン加藤!

この体が覚える感覚、そして覚えた後の万能感は、自転車が乗れるようになった6歳のあの日以来だ。
自転車が乗れたとき、乗れなかった頃の自分を不思議に思ったような感覚。
いまだ乗れない同級生を高みから見下ろすような感覚。

それを再び覚えていた。
精神面の成熟度でいえば、6歳時から成長ゼロだ。

とはいえ、できないことができるようになるのは、悪いことじゃない。
正直「おれはポンコツどころか、才能あるのでは」とさえ思った。
ただ隣で同じ習熟をしている丘さんから「森三君、俺は才能あるんじゃないか?」と話しかけられて、その夢からはスピーディーに覚めた。


ただ、できるとはいえあくまでフォローあってのものだ。
相変わらず背後には、寝てるんだか起きてるんだかわからない目をした加藤さんが目を光らせていて、おれがボルトの山をあげると即座に直してくれる。

ただ、万能感に浸ったおれと丘さんのメンタルは、もう厄介なくらいハイな場所にきてしまって、そのありがたみさえわからなくなっていた。
正直、失敗して山をあげても「カモン加藤!」と唱えながら後ろを振り返るおれがいたし、丘さんにいたっては「早く加藤!」くらいの顔をしていた。

今思うのはただ一つ。
あの困ったおっさん二人を相手に、よく加藤さんはキレなかった。
YOUとっても偉いよ。

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