ピーンしなきゃ無意味。年間250回以上ラジオに踊らされた期間工が教える本物のラジオ体操

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みんなで筋肉体操もいいけど、
いつものラジオ体操の効果もすごいんだよ

期間工になったのがきっかけで始めて、そこからおれの習慣になったものがある。
それがラジオ体操だ。

世に数多くある健康法で、おれが何より効果を感じたものがある。
それがNHKでおなじみの、あのオーソドックスなラジオ体操だ。

NHKが流した狂気的なみんなで筋肉体操が話題になっているが、今こそあの”いつものラジオ体操”に触れてほしい。

多くの社会人がそうであるように、おれも小学生の夏休み以来、ラジオ体操に触れることなく生きてきた。
ラジオ体操は子供がやるものだと思っていた。虫取りとセットだった。
おれはラジオ体操の健康効果を侮っていた。なめていた。

今だからわかる。
ラジオ体操は大人のやるものだ。
常にハイボルテージな半ズボンの小学生には、そもそもラジオ体操なんて必要ないんだ。

ラジオ体操の素晴らしさが、ダッシュでセミを追いかけられる子供なんかにわかるはずがない。
階段で息切れをして、水たまりを越えようとジャンプして足を捻挫する大人になった今だからこそ、あの凄まじい効果を実感できるのだ。

ダイエット、冷え性、肩こり……これがラジオ体操の真の力だ

ちなみに、おれが実際に効果を実感したものを挙げていくと、
・腹がひっこんだ
・肩こりが軽くなった
・目が覚めた
といったものがある。

また特に実感はしていないけど、効果があると報告のあるものに、
・痩せる(ダイエット効果)
・むくみがとれる
・冷え性がなおる
・便秘がなおる
・体幹が鍛えられボディラインが整う
・腰痛がなおる
・動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中のリスク低減
といったものがある。

老人を狙うインチキ健康食品のような驚異的な健康効果の数々だが、これがラジオ体操の真の力である。
これリアルガチだよ。


だがラジオ体操は、ただやればいいってもんじゃない。
というか流れでなんとなく惰性でやっても、なんの効果もない
みんながラジオ体操だと思ってやっているのは、本当のラジオ体操ではないのだ。

おれは知っている。
ラジオ体操をマスターするには、ある重要なポイントがひとつだけあるのだ。
そのポイントさえ押さえれば、ラジオ体操はピリオドの先の姿を見せる。

おれが自らの体で覚えた、そのポイントをここに記す。
実はそのポイントに1人でたどり着いたわけではない。

おれには守ちゃんという名指導者がいた。

ラジオ体操マスター。老師・守

工場の朝はラジオ体操の音からスタートする。

イントロの♪チャンチャララーが鳴り響くと、事務所やら喫煙所やらから、男たちがのろのろぞろぞろと這い出てきて通路に並びだす。
あの軽快なピアノの音が、まるでゾンビを集め寄せるサタニズムミュージックのようだ。

みんなアヘン窟から出てきたような半開きの目をしている。

なにしろ、1勤の始業時間は朝の6時前だ。
眠いどころじゃない。
立っているだけでいっぱいいっぱいだ。
立ちながら寝ているやつさえいる。

ラジオ体操をナビゲートをする例のおっさんの掛け声がやけにイラっとくる。
朦朧とした頭では、おっさんのハイなテンションについていけない。

そんな感じだから、ラジオ体操というよりは夢遊病のような動きで、毎日おれはのろのろと踊っていた。


そんな男たち中にあって、めっちゃキビキビと動く一人の初老の男。
――それが守ちゃんだった。

守ちゃんは定年後に再雇用となった、チームでは最年長となる男だ。
守ちゃんからしたら、チームリーダーだって小僧扱いだ。

パッと見は激痩せしたお猿さんのような風貌だが、常にレッドブルを飲んだ直後のようにエネルギッシュで、仕事面やマナー面にやたらと口うるさい、ありがたくも厄介な存在だった。

で、なぜかそういう面倒くさい存在に目をつけられやすいのが、おれだ。

悪夢。老師・守とマンツーマンでラジオ体操

ある朝、いつものごとく夢遊病を踊っていると、隣にいた守ちゃんが突然おれに向かってシャウトした。

『もいたー!(森田ー!)ちがうんだよぉ!』
びっくりして顔を上げると、キス寸前のところまで守ちゃんの顔が近づいていた。

『おまえ、ラジオ体操できてないんだよぉ!じぇんじぇんちがうんだよぉ!』
じたばたする守ちゃん。

『こーやうんだよぉ!見てろよぉ!』
そう言うと、守ちゃんは老体に似合わぬ素早さで、完全におれの方を向いて、目をしっかりおれに見据えたまま、ラジオ体操を再開した。

突然始まった痩せ猿のマンツーマンレッスン。
眠い頭が現実に追いつかず、ちょっとした悪夢をみている感じだった。

『よーし、同じようにやってみおー!』
守ちゃんのあまりの剣幕に押されて、おれは見よう見まねでどうにか動いてみた。

『ちっげーよぉ!』
ちがうのか。
おれはシリアスな顔をつくって同じ動きをやってみた。

『ちっげーよぉ!おまえ顔だけじゃねーかぁ!』
ばれたか。
今度は同じ動きをスピーディーにやってみた。
これでどうだ。

『だーっ、もう!ちっげーよおっ!!』
これもちがうのか。

おれの「?」な目に業を煮やしたのか、興奮した守ちゃんが、突然おれの背後に回ってきた。
そして二人羽織な姿勢でおれの腕をとり、
『ピーンしろ、ピーン!!』と、熱い吐息とシャウトをおれの耳元に吹きかけてきたのだ。

完全に悪夢だ。

いやぁぁぁ
『ピーン!ピーン!』
いやぁぁぁ
『ピーン!!ピーン!!』
いやぁぁぁ

『ほれ、手足をピーン!ピーンだよぉ!!』
おれはこの状況から逃げ出したい一心で、手足の指先を真っすぐピーンと伸ばした。

『やったよぉ!もいたぁ!それだよぉ!!』

正直、発狂しかけていたので、それどれなんだかよくわからなかったが、それの効果はラジオ体操終了後に如実に表れた。

――なにこれ、めっちゃ体軽い。

なんかこう、肩やら足やら腰についていた重りが、守ちゃんと共に体から離れていった感じがするのだ。
次の日、守ちゃんから遠く離れたところで、ひとりでピーン!を意識しながら体操してみた。

体がぐいーんと伸びるのなんのって。
細胞が目覚める感覚。
おお、これだ。

これが本当のラジオ体操だ。
ラジオ体操への信頼が確たるものになった瞬間だ。
おれが本当のラジオ体操を会得した瞬間だ。

ということで、ラジオ体操のポイントは『ピーン!』

指先までピーン。
これがラジオ体操をマスターするための唯一のポイントだ。

なんだそれと思うなかれ。
これ簡単なことに思えて、実はほとんどの人ができていないのだ。
みんな惰性的にだっらーんとした状態で行っている。

一見、キビキビ動いているような人でも、動きが素早いというだけで、実は体がちゃんと伸びていないことが大体だ。
『ちっげーよぉ!』だ。

指先まで真っすぐ伸ばすことだけを意識すれば、結果的に背・肩・腰と体中が真っすぐになり、正しい姿勢での体操が可能となる。
すると、ラジオ体操のすべての動きに最大限の効果が発揮できるようになるのだ。

やってみると、めっちゃ体が伸びているのが実感できて、ほんとにすっごく気持ちいいですよ。
今までのラジオ体操の概念を覆すレベルなのを保証します。


ラジオ体操では、体を伸ばして曲げてねじってといった、可動域を使ったあらゆる動作を行う。
そう、実はめちゃくちゃ効率的な全身運動なのだ。
なんと一説によれば、あの短い時間内に全身の400以上の筋肉を動かしているらしい。

筋肉が400種類以上あることにまず衝撃を受けたが、まあ細かい話は置いておこう。
とにかく考え尽くされた究極の動きなのだから、これを習慣にしない手はない。

ラジオ体操を本気でやってみるとわかるが、体中に血液が行き渡る感覚を実感することができる。
最近ではダイエット効果も注目され、それ目的で始める人も多く、毎朝の習慣にしたところ年間10キロ以上痩せた方もいるらしい。

ただ期間工時代、ラジオ体操イコール始業の合図でもあった。
今でもパブロフの犬的に、あの音楽を聴くと、とっても憂鬱になるでござる。

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