日本一遅刻のできない職場から学ぶ、遅刻で絶対に怒られない方法

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土下座謝罪

ホンダほど遅刻ができない職場は他になかった

今までいくつもの職場を経験したが、ホンダほど遅刻がしづらいところはなかった。

かつて時間通りに動くという概念のなかったおれ。
むしろ遅刻もおれの個性みたいな、間違ったメンタルにさえなっていたように思える。

そんな南米スタイルな時間感覚も、ホンダの期間工時代ですっかり矯正された。
そのおかげで、いまの会社ではほとんど遅刻はしていない。

5分寝過ごしただけでも、シャウトして飛び起きるくらいトラウマ級に矯正されている。


ではなぜホンダがそんなにも遅刻しづらい職場だったか。

それは、ひとつのポジションが不在だと、ラインすべてが回らなくなる自動車工場だからだ。

各ポジションへの配置は1名づつ。
期間工とはいえ、セクションのひとつを担う以上、責任は重大だ。

森三がいない。
てことは、ガラスを締める奴がいない。
てことは、ラインが回らない。
てことは、誰かが代わりに森三の作業をやらなきゃいけない。

そう、
“おれがいない = 社員の誰かがおれの代わりにおれの仕事をする”
という図式となる。

工場特有の面倒くさい連帯構造だ。
おれがいないと成り立たない。これは他の職場にはなかった、なかなかのプレッシャーだ。

この遅刻できないことのプレッシャーは、代わりに入ったその“誰か”への罪悪感や、ましてや業務への責任感からくるものではない。
代わりとなる“誰か”への恐怖心からくるものだ。

ではなぜそんなにも”誰か”に対して恐怖心を覚えるのか。
さっきの数式を深堀りしてみよう。

“誰か = ラインで特定の持ち場をもたない社員 = リーダーなどチーム内で偉い人たち = 全員ゴリラ”

はい、この図式だ。

さすが過酷な生存競争に勝ち抜いてきただけはある。
ホンダのリーダー格クラスは皆、闘争心・戦闘力・顔ともにゴリラだ。

そう、おれが寝坊すると、凶暴にして偉いゴリラのうちの誰かが、期間工であるおれの代わりを務めることになるのだ。

これが恐怖だった。


もうほんと、遅刻して工場の扉を開けた瞬間の光景が最悪なんすよ。

いつもおれが立ってる定位置に、不機嫌そうなゴリラが立っているんだもの。
なんか怒りでウホウホしながら、本来おれがするべき仕事をしているのだ。

罪悪感も吹き飛ぶ恐怖の光景。

ああ帰りてえ。
急ぎに急いで、ようやく着いたばかりなのに帰りてえ。

正直、おれが逆の立場だったとしても、怒りでウホウホすることはない。
おれは自分にすごく甘いが、他人にも平等に甘い。

あなたに優しくするから、おれにも優しくしてね。
そんなポリシーで生きている。

だから怒りの感覚がよくわからなくて余計に怖くなるのだ。
いまいち実感をもって怒りの濃度を測れない。


ちなみにホンダは原則として、熱が出ても出社して敷地内にあるクリニックで、正式に不調を認定されないと休むことができない。
もちろんインフルエンザも、正式な診断書がないと認められない。

そのクリニック内の手続きが面倒なので、ちょっとくらいの熱っぽさなら仕事にでることを選ぶ。
それにどんなに体調が悪かろうと、休めばゴリラはめっちゃ不機嫌になるし。

とにかくおれは、そんな過酷な環境でサバイブしてきた。

そこで編み出した、本当に使える遅刻の対処法を今から教えたい。

世間一般の遅刻セオリーが通じない世界で期間工は悟った

ちなみに、下がよく聞くけど、使うことができなかった定番の言い訳テンプレたちだ。

・コンタクトを落とした
・アラームが鳴らなかった
・お腹をくだした
・自転車がパンクした
・お婆さんを助けていた

――ぬるい。
達してない。

こんなのはホンダじゃ、遅刻の言い訳になんかならない。
婆さんをかついだままタイムカードを通せと言われる。

またそれとは逆に、嘘をついてバレると逆に信頼を失いかねないから、「寝坊しました!」とはっきり正直に言ったほうがいいよ、とかいう意見もある。

これもまあ定番の作戦ではある。
おれはワシントン戦法と呼んでいる。

――ただ、これもぬるい。
全然達してない。

人間社会にいるから、そんな甘っちょろいことが言えるんだ。
相手はゴリラだぞ? 握力500キロあるんだぞ?
「なに正直に抜かしとんねんワレボケカスしばくぞワシントンて誰や!」と、バナナを食いながらキレられるのがオチだ。

そう、ここは世間のセオリーの通じないジャングル。
おれは根本に戻って、遅刻の対処法というものを一から練りなおした。

大事なのはWHYではなくHOW
遅刻の言い訳はするな。走れ。

かつてジョン・レノンはこう言った。
『君から見れば、君は正しい。僕から見れば、僕は正しい』

はっ。
なにかヒントが見えた。

おれはゴリラの気持ちになって考えてみた。
遅刻する側ではなく、遅刻をされる側の視点だ。
そして遂に、ひとつの答えを見つけた。

大事なことはWHYではなくHOWだ。
なぜ起きてしまったかを言う必要はないんだ。
大事なのは起こった事象に対してどうしたかだ。
――これだ。

そう、見知らぬ婆さんを助けようが、見知らぬカズオを助けようが、遅刻は遅刻だ。
見知らぬカズオって誰だ。
まあ、とにかく遅刻してしまった事実は変えられない。

むしろ人間性が問われるのは、そこでどのように対処しようとしたかではないか。

つまり、どれだけやむをえない理由があったかを語るより、どれだけ頑張って失った時間を取り戻そうとしたかを見せつけることが、一番いい方法だと気づいたのだ。

そしてさらに大事なことは、言葉は使わず、視覚的な情報を利用するということだ。
視覚の情報量は、聴覚の約8倍あると言われている。
これを使わない手はない。

すごく初歩的なとこから言えば、歩いて登場するな。走れ。ということだ。

もちろん全力疾走だ。
ピッチ走法では伝わらないものがあるのだ。
セリヌンティウスをライン上に待たせているかのごとく走るのだ。

サライを口ずさみながら走れば、みんなが温かく迎えてくれるような錯覚も起こせる。


まあ”走る”は基本中の基本、アマチュアの技だ。
プロはそんなもの使わない。

極めるとこうなる、という例を挙げよう。

上級者向けだから、最初は難しいかもしれないけど、それでもなにか見えるものがあるかもしれない。

こんな人を怒れるか?
そう考えながら見てみよう。

・濡れて震える子犬を抱きながら出社
・松葉杖をつきながら転びつつ出社
・割れたメガネと鼻血で出社
・遺影をかかげながら出社
・点滴を打ちながら吐血

これは怒れない。
絶対怒れないでしょ。
最後の出社してねえし。

あ、あと自分で自分にキレながら登場するのも効果的でいい。
ゴリラに怒られる前に、ふがいない自分を自分で怒ってしまうのだ。

あれじゃないっすか、人って誰かがキレていると逆に冷静になって、普段怒りっぽい奴とかが「まあまあ」とか、なだめ役になったりするじゃない。
あれって、ゴリラも一緒なのよ。

この心理をうまく使えば、人の怒りはうまく鎮火させることができるのだ。

例えば松葉杖戦法を選んだ人は片足でけんけんしながら「ちくしょう動け馬鹿野郎!おれの足!」と自分の足をバシバシ叩きながら現れればいいだろう。

他の人たちも、なんかこう髪の毛とかむしりながら「てめえ馬鹿野郎!おれだよ、おれの馬鹿野郎!」とか号泣しながら現れればOKだ。
もうすでにおれがしっかりキレておきましたよ、くらいの気持ちで登場しよう。

ただ、髪の毛のむしりすぎと号泣しすぎには、注意が必要だ。
リーダーから、妙に優しい言葉長期のお休みの提案がきたら、イエローカードだと思ったほうがいい。


まあとにかく、上記の技が使えるようになったら、もう遅刻で頭ごなしに怒られることはなくなるだろう。
相手が戸惑っているうちに、しれっとした顔で通常の作業をこなしていれば、すぐにうやむやになってくれるはずだ。

ただ安心してはいけない。

「で、結局今日はなんで遅れたん?」
記憶力のいいゴリラなら、仕事後にこうズバリと聞いてくることも考えられる。

ここで大事なのは、慌てないことだ。
へんに中途半端な言い訳を始めたら、ここまでの工夫が全部パーになりかねない。

なぜ遅刻してしまったのか? は一切言わない。
これが鉄則だ。
ここでも視覚効果を最大限に利用しよう。

具体的にどうするかというと、これは簡単。
黙って静かに首を振るだけだ。
少し悲し気な笑みを浮かべながらだと、なんか深みがでて良い。

「カズオは手遅れだったようです……」
そう呟いてみるのもいい。

だからカズオって誰だ。

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