アルコール依存症の期間工ブログ【4】 ―丸メガネの大暴走。酒乱を軽蔑していた私が酒乱になった日―

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バンクシー

『これほどいい気持ちになったことはなかった。魔法そのものだ。どうして誰もおれに教えてくれなかったのだろう? こいつがあれば人生は素晴らしい。人間も完璧になれる。どんなことにも煩わされることはない』
チャールズ・ブコウスキー(作家)


アルコールに強くなって、飲める酒の選択肢が増えた。
今までは注意深くアルコール度数を気にしていたが、そんな必要もなくなった。

なにより嬉しかったのが、日本酒が飲めるようになったことだ。

おれはもともと日本酒が持つ味わいや雰囲気が好きで、間違っても「ポン酒」と呼ばないくらい愛着を持っていて、それを自由に嗜めるようになったのが、めっちゃ嬉しかった。


愛飲するのは『白鶴まる』

アルコール臭いだなんだ言う人もいるが、そんなのはまるのCMの前では無意味な戯れごとだ。
大漁旗をかかげた漁船と漁師メシを前に、酒の味なんて野暮な話は海に沈めちまえ。
そんな説得力がまるにはある。

ちなみにおれの中では、まるのCMといえば矢崎滋だ。
氷川きよしでも城島リーダーでもなく、やっぱり矢崎滋だ。

矢崎こそ、まるのブランドそのものだ。

人生でこんなに力強く矢崎推しをする日がくるなんて夢にも思わなかった。

漁師とおばちゃんと矢崎滋と一緒に「まるーっ」と言えば、人生はそれだけで明るくなるといっても過言ではない。
いや過言だ。嘘はよくない。

白鶴まる

まるのCM以外で矢崎滋を見たことがない

まあそんなわけで期間工の単純労働を終えた後の無為な夜に、日本酒を飲むというイベントができた。これは嬉しい。

ちなみにこっから先の話、色々と問題がでてきたらすごく面倒なので、ぜーんぶ夢の話ってことにしてください。

起きてる間、ずっと酒が飲みたい症候群

巨大自動車工場のシステマティックな組立作業は、単純さゆえに結構メンタルが疲弊する。
期間工の仕事を終えての毎夜の晩酌は、気持ちよく精神をときほぐしてくれる。

いつしか飲酒は習慣となり、みるみる「習慣」の範疇をこえ、さらには「楽しみ」の範疇もこえ、いうなれば生きがいに近いものになっていたようだ。

おれは異変に気づいた。

――夜まで待てない。
朝タイムカードを押したときに、すでに頭には酒がちらつきだしている。

ある日おれは気づいた。
これはちょっと異常だ。

だって目覚めてその後、ずっと、もうずーっと酒が飲みたいんだもの。
それしか考えられないんだもの。

世間の酒好きって、こんなの耐えてるの??
本当は飲んでからタイムカード押してんじゃないの??
って思うくらい酒が飲みたかった。

そしてとうとう土日は昼から飲みだすようになった。

土曜・日曜は前に書いた彼女と会う慣例があったが、アルコール耐性を増して顔も赤くならなくなってきたおれは、バレるわけねえと高をくくって隙を見てこっそり飲みだした。

彼女が学校にいった時、コンビニにいった時、シャワーを浴びている時。
おれはバッグからシュッと、相棒となりつつある白鶴まるを取り出して、くいっとやっていた。

破滅フラグのにおいがぷんぷんだ。

これはもう、一生運転できないゾ。
まあ酒が飲めるならそれでもいいゾ。
オラしんのすけだゾ。嘘だゾ酔ってるゾ。

まあそんな状態の常態化だ。
当然、運転なんてできない。

まず原動機付自転車、通称・原チャリを売った。
てか改めて知ったのだが、あいつ自転車だったのか。
自転できないくせに、自転車だったのか。

ホンダの原チャリ

おれの相棒・HONDA スクーピー(生産終了)

売った理由はどこか外出した際に、飲酒を我慢できる自信がなかったからだ。
そして酔った自分に、飲酒運転を抑えるモラルが残っているかと言われたら、まったくその自信がなかった。

なので、原チャリを手放した。
この大きなトラブルを起こす前の大胆な決断は自分でも拍手したい。

ちなみに売ったと書いたが、実際には見積もりにやってきたバイク王の店員に、
「あ、これムリっす!引き取るとしたら1万円かかるっす!」
と爽やかにガラクタ認定され、1万円を払って引き取ってもらった。

1万円くらいになるだろうと思って呼んで、逆に1万円とられた哀しみはなくはなかったが、まあいい。
冗談でなくその時は、もう一生バイクも車も運転することないだろうと思っていた。

自動車工場で車を作っている男とは思えない思考回路だ。

酒乱を軽蔑していたおれが、酒乱になるゾ。
人間てそういうとこあるゾ。
オラしんのす嘘だゾ。酔ってるゾ。

以前も書いたが、おれの酔い方は、わけがわからなくなる自失状態になるか、なぜか詩人になるかの2パターンだ。

だがアルコール耐性を増したおれに、「凶暴」という新パターンがちょいちょい顔を出すようになった。

俗に言う、酒乱の一種だ。おれが一番きらいなやつだ。


いまだに映像として覚えているのだが、ある冬の朝方、アルコールのキマッた丸メガネ(おれ)は埼玉のとある駅前を、へべれけ状態で歩いていた。

平日の6時台、通勤途中のサラリーマン達が足早に駅へ向かう中、おれは人生さながらにジグザグに逆流して歩いていた。

その駅前にはいかにも埼玉っぽい繁華街というかアーケードがあって、その中に、1階がゲーセンだかなんかで2~5階がカラオケ店という娯楽的な建物があった。

事件はそこで起きた。


おれがちょうどその店の前を通りかかったとき、2階のカラオケ店の入口からジャラジャラとアクセサリーをつけたチャラチャラした20代なかばと思われる男女8人くらいが、ゲラゲラペラペラ騒ぎながら現れたのだ。

オノマトペ(擬音)の嵐だ。それくらい騒がしかった。

男たちはチャラい感じのテカテカしたダウンジャケット、そして女たちはあろうことかこの極寒の中、ピラピラした超ミニスカートときている。

瞬時に、おれの中に厳格な親心が芽生えた。
ばっかもん!

そう、なぜか突然、波平のような古き良き昭和のオヤジがおれの体に降臨したのだ。
マドンナ風にいうと「Like a NAMI-HEY」だ。なにが言いたいんだおれ。


集団の中に、チャラ男に腰へ手をまわされた派手な金髪の女がいた。
おれの中の波平は、彼女を「雅美」と名づけた

――そんなビッチ寸前のふしだらな格好でどこの馬の骨ともわからない男とオールナイトとはけしからん! 雅美、戻ってきなさい雅美! 母さんも心配しているぞ!!!――

初めて見たはずの雅美(仮名)だが、なぜかおれの脳内には、雅美が幼かったころの思い出が浮かんだ。

「ましゃみね、大きくなったらパパと結婚しゅるの……」
あの健気でかわいかった雅美。どうしちまったんだ雅美。

おれのカオス化した積み木くずしな親心は、もう次なる行動を止められなかった。
雅美ら一行とおれとの距離は推定27メートル。
一塁ベースから二塁ベースくらいの距離だ。

その距離で、手にしていた490mlは残っていようかという「お~いお茶 濃い味」を、火炎瓶さながらに思いっきり投げつけた


『新年は 愛孫の笑顔と やってくる (東京都・63歳)』

そんな心温まる俳句が書かれたペットボトルが、凶器と化してクルクルと回転しながら飛んでいく。

もともと野球部で、集中力は低いがセンスの塊と評されたおれだ。
この距離で狙い通りに投げるなんてマジで余裕すぎる。

レーザービームのように放たれたペットボトルは、おれの狙い通り、雅美たちの顔面スレスレをすり抜け、カラオケ店の入口横の壁に派手な音を立てて命中した。爆発したかのように中身が散った。

「てめえハゲ働いてる皆さんに謝れコラー!!!」

おれはそう叫んだ。
実際にそう叫んだ。
余談だが実際にはハゲはいなかった。

悲鳴。

『え、え、なになになになに!!?てかやばいやばいやばい!!!』
パニックに陥りながら店内に逃げこもうとする雅美と腐ったみかんたち。

「うるせー!!」と、誰よりもうるさい声でおれは叫んだ。
さっきから目にとめていた足元のゲンコツメンチくらいの石を拾って、逃げ惑う背中に全力で投げつけた。

“飢えたオオカミどもめ、おれの大切な雅美には指一本触れさせない”

野球部時代、古田敦也以来のメガネのキャッチャー(後に外野へコンバート)でセンスの塊と評されたおれだ。
雅美のウエスト付近に手をまわしている、チャラ男を狙うなんてマジで余裕すぎる。

だがここへきてイップスになったのか、石はなぜかチャラ男ではなく、大切な雅美本体のウエスト付近にクリーンヒットした。

悲鳴。

さらにもう一個、今度はゲンコツコロッケくらいの石を再び拾う。

これは入口近辺の大きなガラス窓に向かって投げた。

ポリカーボネートのような素材だったのだろうか。
予想したようにガシャーンとはいかず、鈍い音を立てて大きく揺れただけだった。
でも悲鳴。

バンクシー

この前、サザビーズのオークションでのシュレッダー事件で話題になった覆面アーティスト・バンクシー。
そんな彼の代表作のひとつ。
花束を「お~いお茶」に変えればあの日の私となる。

ここでおれのテンションは気持ち良く下がった。

そろそろ警察呼ばれるなこれは。よし帰ろう。と思った。
そして、おれは歩きだした。


丸メガネの男による動機不明の事件が起きたにもかかわらず、周囲の様子にはとりたてて変化はなかった。
ちなみに、おれにさえも動機は「?」だ。
犯人にも動機がわからない事件というのは存在するのだ。
ひとつ勉強になった。

おれは普通に歩いて帰ったが、誰にも止められることはなかった。

我・関・せず。
これがサラリーマン大国、日本の朝だ。
良くも悪くも日本の朝だ。

ただ心なしか駅へ向かうお父さんたちから「グッジョブ」と無言のエールをかけられているような気がして、どこか誇らしい気持ちでおれは家に帰った。


――って、今ならもちろん異常だってわかるし、警察に捕まらなくて良かったって保身的な意味でだけど反省心もありますよ!!

いやー、それまで酒乱って軽蔑してたけど、自分の身になると、自然発生的に普通に起こりうることなんだなと思いました。

普段のおれ、チャラかろうがビッチであろうが、人に怒りを覚えるとか、ましてや暴力をふるうなんて考えられないですもん。
サバンナの動物でいえば、シマウマくらい穏やかです。
説得力ゼロですね。

怒らない人の特徴

これSNSで話題になってましたよね。超わかる。ほんとにほんと。

あと念のため言うと、さっきも書きましたが、これぜーーーんぶアル中の夢の話ですよ。

夢ということでお願いします。


思いっきり話変わるけど、白鶴まるのCMと、金子みすゞの「大漁」って詩を並べると、複雑な感情になります。

それではさようなら。

白鶴まるのCM

▼シェアシタ貴方ヘ福ガ訪レマスヨウニ▼